まず、はじめにホウ酸とホウ酸塩は全く別のものです。ホウ酸は非常に毒性が強くホウ酸を吸い込んだりすると、吐き気・嘔吐・下痢などを引き起こすことがあります。致死量は成人で10~20g程度、幼児では5~7g程度と言われています。化学式は H3BO3です。一方ホウ酸塩は、アメリカ大陸やトルコ地方の地下鉱脈から採掘される無機物の自然界に存在するミネラル成分で、安全で環境に優しく、古くから木材の防虫・防カビに使用されてきました。ホウ酸塩はその保護能力の高さで世界中に良く知られています。化学式はNa2 B8 O13 4H2O(八ホウ酸二ナトリウム四水和物)です。
ホウ酸塩はほとんどの腐食や木喰虫からの保護に非常に効果的です。ホウ酸塩は保護的に貝殻のようなコーティングを作り、ほんの一例としてシロアリ、木喰虫、ヒラタキクイムシ、およびクロオオアリ、また乾燥、湿気、および赤腐れなどから木材を保護します。シロアリはホウ酸塩を含んだ木材を巣に持ち帰って、それを食した巣にいる成虫、幼虫に毒成分を波及させ死滅させる仕組みです。ヒラタケキクイムシは幼虫が孵化するとき、その場所でホウ酸塩の成分が有効であればその時点で死にます。成虫の場合は食した時点で死にます。人の場合は皮膚からの吸収がなく、害は少ないと報告されています。
具体的には20%くらいの水で溶かしたホウ酸塩に木材を浸すことが有効的ですが、現場では不可能ですので、農薬散布などで使われる加圧式噴霧機で散布することでも十分効力を発揮します。もちろん、木材にはステインなど何も処理されていない地肌の状態が大前提です。浸透した分だけ有効になります。また、現場で水温が低いと20%のホウ酸塩が溶けにくいので、もし、お湯が使えるならばそれも望ましいですが、不可能な場合は10%で溶かしたホウ酸塩を散布し、一度、乾燥させた後に再度10%ホウ酸塩を散布する方法で十分に効きます。特に長期間木材を現場で地肌の状態で放置したり、また、倉庫等で保管する場合に散布をお勧めいたします。また、長期間の保存でなくても、知らない間にカビの菌が木の細胞に進入しています。その上からステインをしてしまうと、菌を中に閉じ込めてステインの下側からのカビの発生原因となります。菌はホウ酸塩が接触しただけで死滅します。ステイン、塗りつぶし塗料等の処理でも変色などはしません。